東京都美術館「スウェーデン絵画 北欧の光、日常のかがやき」

先日、撮影の仕事で横浜に行き、その翌日が撮影無しで空けられたため、SNSで見かけて気になっていた標題の展覧会へ足を運んだ。

スウェーデンといえば、IKEAの家具や雑貨をいくつか使っていて、なんとなく生活と縁がある。北欧の家具やファッションなどもよく取り上げられているのを見かけるし、あまり好きな言い方ではないけれど、北欧のセンスは多くの人に好まれているように思う。
展示の挨拶にも書かれていたが、”インテリア・デザインやファッションの分野では、シンプルで機能的なデザインの中に、どこかぬくもりを感じさせる”ような特徴があるらしい。IKEAで買って使っているものにも「シンプルで機能的、そしてどこかあたたかみがある」ところに惹かれて買ったものが多いような気がする。

絵画を見ていて感じたのは、やはり日本とは光が違うなということ。直観的に言うなれば、光の面が大きいのに直進性が高いような光。柔らかく当たっているのに、真っ直ぐに被写体の輪郭を届けてくる光。これが合っているのかはわからないけど、そう感じた。
あとは、色彩について。鮮やかだけど少し優しい赤、柔らかいけどしっかりと存在感を持つ青、黄色はなんだか情熱的。使える画材の違いもあるのかもしれないけど、国によって色彩感覚や存在する色も違うということをあらためて感じる。

この展示は、最初のパート以外は一部の作品を除き撮影OKだったので、写真とともに特に気になった作品について少し書いていきたい。


陽光-ファンニ・ブラーテ

光に手をかざし、影を作って遊ぶ少女というシーンの、この流れる時間の中の一瞬がとても愛おしい。画面中央の暖かな光が溜まる個所からは、少女が手に感じているであろう温度を自分の手の甲にも思い起こすことができるよう。また画面左側の色の配置も見事で、おそらく北側になるのであろう窓からの光の青白さ、その光が注ぐチェアとテーブルの透けてしまうような存在感。このチェアに座って本を読んでいたい。カーテンの透け感の描写も、実に見ていて心地がいい。


キッチン(『ある住まい』より)-カール・ラーション

まずは左側の女の子が可愛すぎて釘付けになってしまった。この人の他の絵もそうだけど、人物の顔のラインの描き方がうますぎる。こんな美しい横顔はずっと見ていられる。そして、髪の毛のリアリティ。綺麗に編んであるのも素敵だが、そこから零れた毛のラインが生々しく、湿度や温度を感じる。また、スカートの立体感やチラリと見える脚、そして靴の艶理とした質感からは、徹底的に描写するという執念も感じる。

右側の顔の見えない小さい子も、その姿勢のたどたどしい感じ、光を浴びた髪の毛のふわっとした感じが、なんとも健気で可愛らしい。

レースカーテンの透け感と、風にふわりと揺れる感じがいい。

また、割とフラットに見える全体の色使いであるのに、立体感と存在感も共存している。輪郭線もくっきりと描かれていてカートゥーンのような気配もあるのに、デフォルメ感よりもリアル感がある。レンジフード(?)下の影の落ちた壁面のグラデーションも見事。そしてオーブンや調理器具の金属の存在感や光沢感も見事。

何か食べ物見つけたのだろうか、隅にて何かを見つめる小さな白猫があんまりにも可愛らしい。


ティンメルマンスガータン通りの風景-エウシャーン・ヤーンソン

まず、光がいい。夜にこういう場所を見つけた時の高揚感を思い起こす。あふれんばかりの光で建物を照らしていて、それに寄り添うような階段がどこかへ誘う。

そもそもこういう階段のある風景は、その立体感に惹かれる。多層な街が好きだ。

ずんと曇っているのだろうか。モヤモヤとして魔の気配をも感じるような夜空は、なぜか暗いのに明るい。こんな夜は、ふらふらと散歩をしたら楽しいだろうな。


5月の夜-エウシェーン・ヤーンソン

この絵を見た瞬間に思ったのは、ISO感度をかなり上げて撮った写真みたいだなということ。荒目のカンヴァスにふわりと乗せられた色の感じが、まるでセンサーのノイズのように見えたのだ。

そしてこの鈍い視覚は実際に夜の風景、特に日の入り直後の時間帯の柔らかなグラデーションを、ぼーっと見つめて、深く夜へと沈んでいくのを眺めている時の感覚を思い起こすようだなと思った。

手前にいくつか存在する光はガス灯だろうか。湖(あるいは川なのか)の奥にも点在する光に、生活の存在を想像する。

この春らしいような柔らかな日没後の空気感に、つい深く息をしてしまうような作品だった。


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