この記事は表題の小説のネタバレを含みます。また、直後の感情をとりあえず残しておきたいと思っての投稿のため、あえて荒削りの打ちっぱなしでの投稿です。
この衝動をどこにぶつければいいのかわからない。一穂ミチの「光のところに居てね」を読了した(読了と言ってもAudible)。朝九時ちょっと前のことだった。
「そのすべてが、光のところにいた。」
本当にこの最後の一文のためだけに、ここまでの文脈がつながっていて、その重みに、心臓が握りつぶされてしまうようだった。
所々の情景や心象の描写の巧みさにウンウンと唸りながら、終盤には二人がだんだんと言葉でも通じ合っていく。
ユズは、最後の最後には、今までではありえないほどの行動力をその変化といかにカノンの存在が重くなっているかを示すし、とうとう光をまとってカノンを離すまいと追いかける。
おとなになってからは地名が彼女らの認識とともに明らかになり、その土地の風景とともに彼女たちの光景が浮かんでくるのも素晴らしい。
それぞれの夫となる男性二人の人物造形にも唸った。ふじのの不器用な優しさにも、共感できるし、ミナトの行動にだって、自分が同じ状況になれば自分だってそうするという気持ちが湧いた。
ミナトとカノンが別れを決めるシーンには涙が止まらなかったけど、この二人の関係性もまた美しいと思った。
別れを決めた後にミナトがユズに説明する言葉も、抽象的でありながら、彼らのそれまでの生き様の表現として最高だったし、その後の未来もまた、光に包まれていてほしいと心から願うことができた。
学生時代のフジノの行動は一瞬、やはり下心もあるだろうとも思ったし、いや、彼は本質的にそうしたとも後で思った。この解釈が揺れる感じも楽しい。
最後の終わり方には叫び声を上げてしまった。小説って、引き際がうまいと本当にやられたなという気持ちになる。
彼女たちがその後どうなったかは、想像に任せるというこの鈍い気持ちで置いてけぼりにしてくる感じ。とても悔しい。
彼女たちは、その後は少しの距離を保って、それでも手を伸ばせばすぐに会えるとこで生きていてほしいと思うし、そうなっただろうと僕は思う。ユズはもう、ぜったいにカノンを手放さないし、おとなになった彼女は、そうする力も持っている。そして、カノンはそうやって追いかけられることがどうにも嬉しいのだろう。
物語の終盤、本当に終わらないでほしいと思った。ずっとこの話を読んでいたいと。
とりあえず、紙の本を入手しようと思う。
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